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【レビュー】raytrektab DG-D08IWPで絵を描く【ワコムペン搭載8型Winタブ】


raytrektab(レイトレックタブ) は4096段階の筆圧感知に対応するWacom feel ITペンを採用した8インチWindows 10 タブレットPCです。

さっそく購入したのでお絵描き目線で色々見ていきます。

スペックなど

  • OS:Windows 10 Home 64bit(バージョン1703)
  • CPU:第4世代(Cherry Trail)Intel Atom x5-Z8350 1.44GHz
  • メモリ:4GB DDR3L
  • ディスプレイ:8インチ 1,280×800(16:10、189ppi)5点マルチタッチ対応
  • ストレージ:64GB eMMC
  • 重量:約400g(タブレット本体)
  • ペン:ワコムEMR(筆圧4,096段階)スキャンレート180Hz

raytrektabはWacom feel IT technologiesによるデジタイザーペン対応。付属ペンは本体内蔵不可。

Wacom feel IT technologiesは電池レスの電磁誘導方式(EMR)と電池ありのアクティブ静電結合方式(AES)の両方を含みますが、この機種は電池レスの電磁誘導ペン(EMR)です。8インチの電磁誘導ペン搭載タブはASUS VivoTab Note 8以来の登場で、ポータブル液タブとして待ちわびていた人も多いのでは。

本体裏面にも「feel by Wacom」の印字があります。

CPU等のスペックは2017年のPCとしては最低限ですが、ペイントツールを動かすだけなら困らない程度の性能はあります。標準芯・フェルト芯・エラストマー芯が付属し、CLIP STUDIO PAINT DEBUTのプロダクトキーが同梱するため、これ1台ですぐにお絵描きが始められます。

開発はサードウェーブデジノス。基本的にサードウェーブグループであるドスパラ専売ですが、Amazon でもサードウェーブデジノスが出品しています。

初期状態はほぼ素のWindows 10

初期状態ではほとんど何も入っていません。唯一、マカフィー・リブセーフがプリインストールされています(ドスパラのPCはマカフィー・リブセーフの1年間ライセンスが付属するとのこと)。余計なアプリが入っていないのはいいですね。ストレージの初期空き領域は約40GBでした。

ワコムペンドライバ(WinTab)や、バンドルされているCLIP STUDIO PAINT DEBUTもインストールされていません。CLIP STUDIOは付属の紙に従ってインストールする必要があります。

Windows 10タブレットなので、Clip Studio PaintのほかにもPhotoshopやSAIなどのWindows用アプリをインストールすることも可能です。

ワコムペンドライバー未対応

店頭でのデモ機にもドライバーはインストールされていなかったのでそんな気はしていましたが、2017/4/30時点の最新 Wacom feel IT Technologiesドライバ Ver.7.3.4-28をインストールしようとしたところ「対応するタブレットがシステム上に見つかりません」として弾かれました。ワコムペンドライバが新機種に対応していないのはいつものことなので、いずれ対応すると思われます。

ワコムペンはドライバを入れない状態ではTabletPC APIにしか対応しません。そのため、旧SAIやFireAlpacaなどのWintab APIにしか対応しないアプリでは筆圧が利きません。WinTab APIにしか対応しないアプリで筆圧を利かせたい場合はMicrosoft WinTabをインストールするとよいでしょう。Microsoft WinTabについては 過去記事 で解説しています。

Clip Studio PaintはTabletPC APIに対応しているのでデフォルトでも問題なく描けます。SAI2 進捗報告版もWinTab APIに対応しない場合は自動的にTabletPC APIを使用するため問題なく描けます。

問題点は、Bamboo Smart CS310UKなどの互換ペンを使用した際にサイドスイッチが効かないこと。付属ペン(サイドスイッチなし)を使う分にはワコムペンドライバーなしでも特に問題なく扱えるかと。

鉛筆ライクな付属ペンはサイドスイッチなし

付属ペンはテールスイッチあり、サイドスイッチなし。出っ張りのないシンプルな形状ながらペン先側が六角形なので机の上で転がっていったりはしません。ペンのお尻側(テールスイッチ)は消しゴムとして動作可能。長さはCintiqのグリップペンより少し短いくらい。太さは鉛筆と同等です。

初期状態ではペン先を画面に当てても描けず不良品かと思いましたが、芯をグッと押し込んだら描けるようになりました。

2種の替え芯が付属。エラストマー芯の取り扱いは注意が必要

付属のペンには標準芯(黒)がセットされており、替え芯としてフェルト芯(グレー)、エラストマー(白)が付属。

エラストマー芯に交換してみたところ、エラストマーから別芯に交換しようとしたときにエラストマーが柔らかすぎて(?)付属の芯抜きでは上手く抜けず、何度かトライしているうちに爪切りのようにパチンと芯の先が切れてしまいました(仕方ないので毛抜きを使用して引っこ抜きました)。

白い芯の先が削れてしまったのが分かるかと思います。私が不注意なだけかもしれませんが、これから交換される方は念のためご注意を。

替え芯はBamboo Smart CS310UKなどと互換あり

raytrektabのペンの芯は Bamboo Smart for Samsung Galaxy Note (CS310UK)Galaxy NoteのSペン などと共通のため、流用可能です。ソフトタイプの芯が使いたい場合はCS310UK用芯を使う方がいいかもしれません。

ペンの性能チェック

前置きが長くなりましたが、いよいよ本題のペンの性能についてです。

4096階調の筆圧感知…はそう体感できるものではないとしても、筆圧をかけると自然に反応します。On荷重はいわゆるフェザータッチでも線が引ける程度に軽いです。ホバーの認識距離は約1cm程度。

注目すべきはスキャンレートで、180Hzとスペックに記載されています。スペックにペンのスキャンレートを記載しているのはWindowsタブレットとしては珍しく、メーカー側がよく分かっている証拠とも取れます。他機種のスキャンレートの測定結果は 過去記事 に記載しています。単純に数値で見るとiPad Proやdynabook RZ82には一歩譲りますが、実際使用してみてポインタの追従性は特に問題は感じられず、伸びやかに描けます。

画面四隅では少しズレはあるが問題になるほどではない感じ。ペンを傾けたときのポインタズレもほとんどなく、非常に快適です。他方、画面はダイレクトボンディングではないようで、横から見ると筐体表面と画面表示の間に層が見えます。これによりペンを画面に付けた際にもペン先とポインタに隙間ができてしまいます。視差にこだわる人には向かないかも。

視差を除きペンの精度は総じてレベルが高く、これだけで5万出す価値があると言えます。

追記:raytrektabのペンは傾き検知に対応しているようです(8bitpaintで検証)

ペンのスキャンレート測定結果

ペンのスキャンレートの公称180Hzについて、念のため測定してみました。

TabPCScanRateでの測定結果は平均5580μ秒でした。μ秒=0.000001秒であり、0.00558秒毎に1回スキャンしています。ppsへの換算は1/0.00558≒179.2で、秒間179回スキャンしていることになります。180には少し届きませんでしたが測定誤差でしょう。

ペンのカーソル位置の調整法について

Cortanaからtabcalを呼び出せば位置調整ができ、VivoTab Note 8と同様の方法 で多点調整も可能ですが、raytrektabはデフォルトでも大幅なズレはないので労力のわりにメリットが薄いように思います。どうしても気になる方はお好みでどうぞ。

raytrektabで使える互換ペンについて

付属ペンにはサイドスイッチがありません。Bamboo Smart CS310UKやRZ82のペンを別途購入すると、サイドスイッチ付きのペンが使えます。旧世代のペン も反応はしますが、傾けたときのポインタズレが大きくなる(ペンを傾けた内側にズレる)のでオススメできません。

私が確認したペンの動作状況は以下の通りです。

地味にオススメなのがGalaxy Note edgeのSペン。Bamboo Smart CS310UKなどはいずれも高騰してしまっている中、(転売屋にまだバレていないのか)比較的安価に入手できます。スマホに内蔵可能なサイズのためあまり持ちやすくはないですが、紛失対策のサブのペンとしては十分に役割を果たせます。スマホがGalaxy Noteな人は使うときだけスマホから引っこ抜いて使うと紛失もしづらくて便利です。

※2017/4/30時点ではサイドスイッチは機能しません。ワコムペンドライバが対応すればサイドスイッチも使えるようになると思われます。

色域が狭い上に緑かぶり気味

液晶の色域は狭く、さらに全体的に緑色が強く出ています。またダイレクトボンディングではないため空気層の反射もあります。モノクロでラフを描くにはさして影響はないですが、お絵描きタブレットとして売るには少々残念な点ではあります。

色域が狭いのはどうしようもないものの、緑かぶりに関しては設定で改善可能です。→raytrektabの緑寄りな液晶を補正する

画面は光沢ありフィルム貼付済み

画面表面には最初から光沢ありのフィルムが貼られているのが確認できます。このフィルムは光を当てると虹色に反射し、まるでシャボン玉の表面のようなふうに見えます。カメラ穴のところはこのようには見えないのでフィルムのせいなのは間違いないと思います。※ドスパラで聞いた方によると、デフォルトの保護フィルムは工場出荷時の傷防止用で、仮のものだそうです。

↓光を当てたキワに緑や赤のラインが縦横に見えるのがフィルムの虹色反射で、肉眼だともっとはっきり見えます。

↓分かりづらいので補正しました。JPEGのブロックノイズじゃないですよ。

というわけで最初に貼られているフィルムは剥がしました。最初に貼られているフィルムは自己吸着タイプで、隅のほうから爪などで浮き上がらせてやると一気に剥がすことができます。

代わりにミヤビックスの反射防止フィルムを貼り付けました。指の滑りの悪さが気になりますがペンの描き味は向上します。フェルト芯と組み合わせると最高に紙と鉛筆感が出ますが摩耗が早そう。

今見たらペーパーライクフィルムも出ていたので、こちらでもよかったかも。

ちなみに(これはraytrektabに限ったことではないですが)Windows10の新機能で夜間モードにすることができ、ブルーライトをカットすることができます。昼間でもモノクロで描くときは夜間モードをオンにすると目にやさしくてよさげです。

画面横のWindowsボタン・タスクバー・タッチパネルの誤爆への対処法

画面横にWindowsボタンがあり、いかにも誤爆しやすそうですが、ペンが傾きに強いので手のひらが当たらない方向に回して使えば特に問題になりません。無効化したい場合は raytrektabのWindowsボタンを無効化する方法 を参照。

タスクバーについても同様に、横向きに使うのであれば逆手側や、縦向きに使うのであれば上に移動すれば問題になることはあまりありません。タスクバーを移動するには、タスクバーの何もないところで右クリック → 設定 → 画面上のタスクバーの位置 で設定可能です。

CLIP STUDIO PAINTのようにタッチでキャンバス移動などをするアプリを使うなら上記で十分に対処可能ですが、SAI2のようにタッチで線が引かれるアプリを使う場合はタッチを無効化したほうが快適です。タッチ無効化についてはWindowsタブレットのタッチパネルを無効化してペン操作時の誤操作を防ぐ方法3つ を参照。

バッテリーが持たない上に充電が遅い

バッテリーはカタログスペックで約4時間(JEITA2.0)と短い上に、なんだか充電が遅いです。特に充電が遅いのがネックで、昨今の急速充電機能付きのスマホのような感覚でいると全然充電されなくてビビります。

充電端子がmicroUSBなので、モバイルバッテリーを活用することで多少はカバーできそうです(2A供給のものなら消費より充電のほうが上回る模様)。

CLIP STUDIO PAINT DEBUTがバンドル

セルシス製のペイントツールCLIP STUDIO PAINT DEBUT(クリップスタジオペイントデビュー)のシリアルコードがバンドルされており、インストールすることができます。簡単なラフやイラストならこれでも十分に使えます。

CLIP STUDIO PAINTはワークスペースのカスタマイズの自由度が高く、画面の狭い8インチ機とは相性がいいですね。

ただしCLIP STUDIO PAINT DEBUTは同PROやEXと比べるとコマ枠やフキダシなどの機能が削られているため、漫画用途では使いづらいかも。単に機能が削られているだけならともかく、PROやEXで作られた(DEBUTで対応していない機能を使った)clipファイルは開いてもファイル全体がロックされて編集できないのがネック。

漫画原稿はテンプレートでコマ枠レイヤーを呼び出す場合が多いと思われ、そういうファイルはCLIP STUDIO PAINT DEBUTでは編集できなくなってしまいます。母艦と相互にやり取りしたい場合は CLIP STUDIO PAINT PRO 以上のライセンスを適用したほうがいいかもしれません。※CLIP STUDIO PAINT PROおよびEXのライセンスは1つで2台まで適用可能です。

DEBUTで具体的にどの機能が使えるのかは CLIP STUDIO PAINT機能一覧 を参照。

おわりに

raytrektabはCPUなどの性能では見るべき点はないですが、特にペンの性能に重点が置かれていることが気持ちよさにつながっています。気軽に持ち歩ける8インチのタブレットとしては「普通に描ける」ということが何よりの価値だと思います。サッと出してササーッと描ける。そういうところに価値を見出せる人には大変オススメ。

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