ワコムの電磁誘導ペン(EMR)は現在4種類もある上に全部互換性がなくてめちゃ分かりづらいのでまとめておく
Hi-uni Digital for Wacomは、ワコムストアで「Wacom One専用」と念押しされているとおり、Wacom One以外の液タブ(Cintiq)や板タブ(Intuos)では使えません。同じ電磁誘導方式なのに~? と思われることでしょう。私もそう思います。
なんとワコムの電磁誘導ペン(EMR)は現在4種類もあり、いずれも互換性はありません。分かりづらくて良くないですよね。
整理するために、それぞれ対応している現行製品や、使えるオプションペンなどについてここにリストアップしておきます。これでもう、どれがどれに対応しているのか丸わかりです。
目次
プロペン2
プロペン2は、Intuos ProやCintiq Proシリーズで使えるペン……のはずだったんですが、のちに廉価モデルの無印Cintiqもプロペン2に対応したため、規格の名前と使える機種にやや乖離があります。
Intuos 4などで採用されていた旧プロペンの上位互換となっており、プロペン2の使える機種では旧プロペンも使えます(逆は不可)。
プロペン2対応機種
- Wacom Intuos Proシリーズ(2017年モデル)
- Wacom Cintiq 16 (DTK1660K0D)
- Wacom Cintiq 22 (DTK2260K0D)
- Wacom Cintiq Pro 13 (DTH-1320)
- Wacom Cintiq Pro 16 (DTH-1620)
- Wacom Cintiq Pro 24 (DTK-2420, DTH-2420)
- Wacom Cintiq Pro 32 (DTH-3220)
- Wacom MobileStudio Proシリーズ(2016年モデル、2019年モデル)
2016年11月以降発売のプロペン系統の製品はすべてプロペン2対応です。
プロペン2の性能
筆圧8,192レベル、傾き検知あり。読取速度は最高200ポイント/秒(Wacom Intuos Pro)。液タブの読取速度は公表されていません。実測では、Cintiq Pro 24は最高180ポイント/秒でした。
旧プロペンのオプションペンのひとつ、アートペンを使えば回転検知も使えるはずですが、私は試していません。
プロペン2対応機種で使えるペン
- Wacom Pro Pen 2 (KP504E)
- Wacom Pro Pen slim (KP301E00DZ) (細身のペン)
- Wacom Pro Pen 3D (KP505) (サイドスイッチ3つのペン)
- Wacom Finetip Pen (KP13200D) (ゲルインクペン内蔵)
- Wacom Ballpoint Pen (KP13300D) (ボールペン内蔵)
- 旧プロペン各種(後述)
Wacom Finetip Pen (KP13200D)、Wacom Ballpoint Pen (KP13300D) はインクペンを内蔵し、紙に描いた描線をコンピュータにも送れるペンです。対応機種は Wacom Intuos Pro Paper Edition に限るとされています。
旧プロペン
旧プロペンは現行製品ではありませんが、分けて書かないと同名商品間の対応状況が分からなくなるので分けました。
旧プロペン対応機種
- Intuos 4
- Intuos 5
- Intuos Pro(2013年モデル)
- Cintiq 21UX(2010年3月以降のモデル)
- Cintiq 13HD
- Cintiq 22HD
- Cintiq 24HD
- Cintiq 27QHD
- Cintiq Companionシリーズ
2009年のIntuos 4発売から、2016年11月のMobileStudio Pro発売でプロペン2が登場するまでの製品が該当します。
より正確には、2013年3月発売のCintiq 13HD以降の機種に付属したのがプロペン(KP-503E)で、2009~2012年の間はプロペンという呼称は存在していませんでした。Intuos 4のペンとプロペンは互換性があるため、ここではプロペンとしてまとめて記載しています。
Cintiq 21UXは発売当初はIntuos 3規格のペンを搭載していましたが、2010年3月にIntuos 4のペンへと切り替わりました。なおIntuos 3以前とIntuos 4以降でペンの互換性はありません。
旧プロペンの性能
筆圧2,048レベル、傾き検知あり。読取速度は最高200ポイント/秒(Intuos 4など)。オプションペンのひとつ、アートペンを使えば回転検知も使えます。
旧プロペン対応機種で使えるペン
- グリップペン (KP-501E-01X)
- クラシックペン (KP-300E-01X) (細身のペン)
- アートペン (KP-701E-01X)(回転検知対応のペン)
- インクペン (KP-130-01)(ボールペン芯を装着できるペン)
- プロペン (KP-503E)
グリップペンは、標準ペンと表記されていることもあります(Intuos 4などに付属していたペンです)。
エアブラシペン (KP-400E) という製品もありましたが、2020年現在、購入可能なショップは既にないようです。ワコムストアでは商品ページ自体が削除されています。
Intuos 筆圧ペン(筆圧2,048段階)
Intuosシリーズ(2015年モデル)などのペンです。
今Intuos(Proじゃない方)として売られているのは、昔はBambooやFavoとされていたエントリー向けの板タブの系統です。Proシリーズと比べて、筆圧段階が低いとか、傾き検知に対応しないといった違いがあります。Bambooが2013年からブランド名がIntuosに変更され、それまでのIntuos系列はIntuos Proに変更されました。
思い返せばBambooがIntuosになったときも、分かりづらいからやめてほしいとユーザーは声高に叫んでいました。ワコムの対応機種が分かりづらいのは昔からですね。
Intuos筆圧ペン対応機種
- Intuosシリーズ(2015年モデル)
- Intuos Draw (CTL-490)
- Intuos Art (CTH-490/CTH-690)
- Intuos Comic (CTH-490/CTH-690)
- Intuos Photo (CTH-490)
- One by Wacom (CTL-672/K0-C)
One by Wacomはファンクションキーやタッチ操作などの機能を廃し、描画スペースを広くしながら安価としたモデル。ワコムストア専売ですが、Amazon等でもワコムストアが出品しているため色々なところで買えます。ペンは2015年モデルのIntuosと同じものが付属します。
※One by WacomはWacom Oneと名前が酷似していますが、Wacom One用の「Wacom One Pen」や「Hi-uni DIGITAL for Wacom」などは使えません。
Intuos筆圧ペンの性能
筆圧レベルは最大2,048段階。傾き検知には対応しません。読取速度は最高133ポイント/秒。
Intuos筆圧ペン対応機種で使えるペン
- Intuos 筆圧ペン (LP-190-0K)
Wacom Pen 4K(筆圧4,096段階)
Wacom Intuos(無印)の2018年モデルに付属しているペンです。このペンの規格には決まった名前は特にないようで、Wacom Intuosの商品紹介ページでは「筆圧4096レベルのバッテリーレスのペン」などと書かれています。
Wacom Intuosシリーズ(2018年モデル)に付属し、従来のIntuosシリーズとは互換性はないとされています。(私は2018年モデルのIntuosは持っていないので本当のところは分かりません)
Wacom Pen 4K対応機種
- Wacom Intuosシリーズ(2018年モデル)
- Wacom Intuos Small ベーシック (CTL-4100/K0)
- Wacom Intuos Small ワイヤレス (CTL-4100WL/K0,E0,P0)
- Wacom Intuos Medium ワイヤレス (CTL-6100WL/K0,E0,P0)
Wacom Pen 4Kの性能
筆圧レベルは最大4,096段階。傾き検知には対応しません。読取速度は最高133ポイント/秒。
Wacom Pen 4K対応機種で使えるペン
- Wacom Pen 4K (LP1100K)
Wacom Feel IT Technologies(EMR)
Wacom Feel IT Technologies(EMR)は、ArtPadという大昔のタブレットの流れを汲む、組み込み向けのモジュールです。
元々はワコム以外のメーカーに卸す組み込み向けモジュールとして住み分けていましたが、Wacom Oneが出たことで立ち位置がよく分からなくなりました。
外野の人間としてはIntuos(無印)のペンはもうこちらに統合してしまったほうがよいのでは、などと安易に考えてしまいますが、それはこれまでの製品の互換性を捨てるということでもあるので簡単ではないのでしょうね。まあ、Wacom Intuos(2018年モデル)は互換性を捨ててリニューアルしたようですが……。
なお、Wacom Feel IT Technologiesの名称はバッテリー入りのペン、アクティブ静電結合方式(AES)でも使われていますが、ペン方式が違うので当然ながら互換性はありません。別物を同じ名前でくくるのは、ただでさえややこしい中にさらに混乱をきたすので、率直に言ってやめてほしいところです。当サイトでは便宜上、(EMR)とつけて区別しています。
Wacom Feel IT(EMR)対応機種
- Wacom One 液晶ペンタブレット 13
液タブとしての対応機種はWacom Oneのみですが、同テクノロジを採用したraytrektabなどのタブレットPCでもペンは共通して使えます。
Galaxy NoteやGalaxy TabシリーズのSペンもこれです。その他、最近ではChromebookに採用例がよく見られるものの、日本では存在感のない製品群かもしれません。
raytrektab DG-D10IWP のパッケージより。機種によってはこのように、パッケージ等に「feel by Wacom」の掲示があります(ない場合のほうが多いです)。
かつてはWacom Feel IT Technologiesの板タブ、Bamboo Padなる製品もありました(2013年発売、現在は販売終了)。 Bamboo Padはペン入力も可能なタッチパッドという位置づけで、ペン入力部分はWacom feel IT technologiesを使用しており、Hi-uni Digital for WacomやWacom One Penなどとも(一応)互換性があります。ただし古い製品なので筆圧レベルは512段階です。
また、ワコム以外では、LenovoがモバイルタッチモニターThinkVision LT1423P(2013年発売)、DELLがDell Canvas 27(2017年発売)を出していました。いずれも現在は販売終了しています。
ThinkVision LT1423PはUSB接続で動作し、タッチ操作と電磁誘導ペンが使えるDisplayLinkモニターです。こちらは筆圧256段階でした。
Dell Canvas 27はタッチ操作と電磁誘導ペンが使える27型の大型液タブで、筆圧2,048段階、傾き検知対応でした。
Wacom Feel IT(EMR)の性能
筆圧は最大4096レベル、機種によっては傾き検知あり。読取速度は最高360ポイント/秒(Galaxy Note 8やraytrektab DG-D10IWPの公表値。機種によります)。Wacom Oneの読取速度は公表されていませんが、実測で240ポイント/秒でした。
Wacom Feel IT(EMR)対応機種で使えるペン
- Wacom One Pen (CP91300B2Z)
- Hi-uni DIGITAL for Wacom (CP20206BZ)
- Staedtler ノリスデジタル (180 22-1)
- その他多数
その他は別ページにまとめてありますので、そちらを参照願います。
追記
プロペン3が登場し、ワコムの電磁誘導ペン(EMR)は現在5種類になりました。
プロペン3対応機種
- Wacom Cintiq Pro 27 (DTH271K)
Wacom Cintiq Pro 27ではプロペン2も使えます。