【FEトラキア776考察】最終章の本来のストーリーはどういう内容だったのかを考える
ものすごく今更感がありますが、ファイアーエムブレム トラキア776の最終章のストーリーにはどうにも違和感があります。違和感の原因から、本来はどうなる予定だったのかを考えてみます(本来の、と言ってしまうと語弊があるかも)。
20年近く前のゲームにネタバレも何もないとは思いますが、一応、以下ネタバレ注意でお願いします。
目次
前書き
トラキア776終盤のストーリーは、ラスボスのベルドが雑魚すぎるだとか、中間管理職だとかばかりが注目されるせいで、イマイチまともに考察されてきていないように思います。ちゃんと考察すると、なんかおかしいな~となるので、今回そのおかしさを共有したく、記事にしました。
最終章で唐突に出てくる「結界」「祭壇」「封印」
(リーフ)
六つの結界をやぶらねば
祭壇は開かない
そういうことだな(アウグスト)
はっ・・・
そのためには
塔の中央を6ヶ所同時に
制圧せねばなりませんファイアーエムブレム トラキア776
最終章 開始時
「六つの結界をやぶらねば祭壇は開かない」と、終章のオープニングでいきなり語られます。なぜ祭壇を開かねばならないのか? 結界とは何なのか? といった説明はありません。言われたとおりに結界を破り、祭壇を開いてみると、中にはラスボスのベルドがいます。
(ベルド)
なっ、なんだと!
封印が破られたというのか!!ファイアーエムブレム トラキア776
最終章 塔の中央6ヶ所制圧時
封印とは何か、についてもやはり説明はありませんが、まあ前述の結界と同じ意味だと解釈していいでしょう。こうやって封印された祭壇に隠れた上に、封印がやぶられた際に狼狽してしまうあたりが、ベルドがラスボスの格ではないと言われる所以の一つです。
なぜ「結界」をやぶらねばならないのか?
終章の舞台は、24章で「ロプトの秘密神殿」と言われており、ベルド司教が立てこもっているとされていました。ベルドを逃がさないために、セリス軍との合流を待たずに倒すべきだとも言われます。
(アウグスト)
マンスター城の地下にはロプト教団の
秘密神殿が設けられておるゆえ
そのせいかもしれませんファイアーエムブレム トラキア776
24章制圧後の会話
(アウグスト)
ただ、ベルド司教が多数の魔道兵と
ともにこもっておりますので
攻め落とすのはたやすくありませんセリス公子の軍が来られるまで
待つという手もありますが、その場合は
ベルドを逃がす恐れもありますファイアーエムブレム トラキア776
24章制圧後の会話(外伝へ進めない場合)
しかし、地下神殿に立てこもった上で封印までされているのであれば逃げるおそれはないので、セリス軍の到着を待ってから倒した方がよいでしょう。矛盾しています。
以上の点から、制作中に何らかの理由でラストのストーリーの変更を余儀なくされ、マップのギミックとの整合性が取り切れてなかったのでは? と思わされます。
そう考える根拠の一つとして、加賀氏がトラキア776のストーリー制作に苦労したことはインタビューでも語られています。
こんなことになるのなら、イチから新しい話にしてしまえば、どんなにラクだったか。というのは、前作との整合性にとても苦労したんです。前作を遊んでいる方に違和感を与えないよう配慮しながら、なおかつ、ひとつの独立したゲームとして成立させなければならないんですからね。
NOM独占インタビュー!! 加賀昭三氏(『ファイアーエムブレム』シリーズゲームデザイナー)が語る、『トラキア776』への想い、プレイヤーへの想い
「祭壇」とは何なのか
まず注目すべきは、トラキア776終章のマップ中央の「祭壇」には竜の顔が彫られている点です。
ファイアーエムブレムで祭壇といえば、真っ先に思い出されるのは紋章の謎に出てくる「竜の祭壇」。暗黒竜メディウスが封印されていた場所です。トラキア776のこのマップでも、本来は竜を封印していたのではないか? と考えたくなってしまいます。
なお最終章のマップは制圧すると浄化され、(これらの竜の意匠のない)普通の城グラフィックに変化します。このあたり、ただの秘密神殿とするにはちょっと不自然です。
これらの要素を併せると、終章には暗黒竜関連のギミックがあったのでは? と考えられます。それはゲーム内に残されていた没メッセージからも伺えます(攻略サイト・かわき茶亭では終章の没メッセージから、「やっぱりラスボスは暗黒竜だった!?」と考察されている)。
シンニュウシャヨ・・・
ココヨリ・・・サレ・・・かわき茶亭 ファイアーエムブレム トラキア776・マスターバイブル
会話集(未公開1) 最終章・やっぱりラスボスは暗黒竜だった!?初戦時
ただし、仮にこれがラスボス(暗黒竜)の台詞だとすると、わざわざ封印を暴いてまで打倒せんとする者共が「侵入者」などという生ぬるい表現となるかは疑問です。また、「去れ」としか言っていないあたり、この者には敵意がないように見えます。
ボスが潜んでいる「封印」をわざわざ解くメリットとは?
仮にリーフ軍が能動的に封印を破って暗黒竜(?)を倒す必然性があるとなると、フルパワーで復活する前に倒す、という話になるのでしょうか。
紋章の謎では、竜族は基本的に静かに暮らしたい存在であり、メディウス率いる地竜族だけが侵略行為をしていました。そのことを考えると、この祭壇に眠る竜族(仮)は(地竜族以外の)比較的安全な存在で、それを倒す必然性はないが、竜族が守る何らかの至宝を得るために攻め込む必要があった、というケースも考えられます。
そこで手に入るのが、キアの杖に相当する、石化解除用のアイテムだったとすればストーリー上の動機付けも十分です(この場合、サラは存在しなかった?)。石化解除が目的だったとすると、制圧後の浄化エフェクトでエーヴェルの石化も解除されたと解釈できます。
そもそも初期設定では24章外伝と最終章の場所はマンスター城内ではなかったのかもしれません。もし仲間の石化の解除がストーリーの最終的な目的となった場合、ラストマップはイード神殿だった可能性があります。
(アウグスト)
これはうわさですが
イード砂漠の地下深くに
ロプトの秘密神殿がありそこには多くの戦士たちの石像が
かざられているそうですその中には
十数年前バーハラの戦いで捕えられた
若き戦士たちの姿もあるとか・・・エーヴェルどのの石像も
いずれその神殿に収められるのでしょうファイアーエムブレム トラキア776
6章 オープニング
ここでも「ロプトの秘密神殿」というキーワードが出ていますね。マンスター城の地下に秘密神殿が設けられているなどと急に言われるよりは、こちらへ攻め込む方が自然に見えますが、いかがでしょうか。
しかし、イード神殿に格納されている石像をすべて石化解除するとなると、親世代のアゼルなども解除されてしまうはずなので、聖戦の系譜のストーリーとは整合性が取れなくなってしまいます。これは没になるのも頷けます。
トラキア776には聖戦子世代のキャラがほとんど参戦しないので、あまり感動の再会にならないというのもありそうです(トラキア776の設定ではラケシスも石化させられているようなので、ナンナやデルムッドとは感動の再会ができますね)。
復活の祭壇である可能性は?
紋章の謎に登場した「オームの杖」は、一部では「マムクートの王国」の聖なる神殿、二部では竜の祭壇でしか使えないようになっています。この設定を考慮すると、祭壇を目指す意味が出てきます。この場合、「封印」はボスやアイテムを封じたものではなく、祭壇という場そのものを封じていたと仮定されます。
ただ、ユグドラル大陸ではバルキリーの杖が死者復活の役割を持ち、この杖はどこでも使えるので、死者復活が目的だった可能性は低いです。
※キアの杖が祭壇でしか使えない設定だった可能性はあります。
「祭壇」にはなぜ竜の意匠が施されているのか?
「祭壇」に竜が封印されていたわけではないとすると、なぜ竜の意匠が施されているのか? という点が疑問になります。
改めて検証してみると、聖戦の系譜・トラキア776の舞台(ユグドラル大陸)では竜族たちは竜の姿を現したことはなく、竜の伝承が残っていることすらおかしいとも思われます。
(レヴィン)
神々は人間に姿を変えていた
光神ナーガは幼い少女
火神サラマンドは老人の姿というふうにファイアーエムブレム聖戦の系譜
終章 ドズル城制圧後
セリスはレヴィンからこの真実を聞くまで、古代竜族の存在を迷信と思っていました。
(セリス)
まさか古代竜族の生き血!?
でも、そんなのは迷信でしょう!ファイアーエムブレム聖戦の系譜
終章オープニング
迷信とされるような古代竜族の存在を信じるものたちが詰め掛けていた祭壇。やはりロプト教団関係の施設ではあったのでしょうか。
ロプトウスやナーガの魔法発動時はエフェクトで竜が出るため、意匠はあるいはそこから来ているのかもしれません。
実はトラキア城だった説について
本来の構想では終章はトラキア城だった、とすれば竜の意匠があってもおかしくはないとも考えられます。終章がトラキア城となれば、タイトルに「トラキア」と入っているのにストーリーのほとんどでフリージ軍と戦っている問題も解消しそうです。しかし、トラキア城に祭壇があり、その封印を解く必要があるとするストーリーはかなり意味不明なので、この可能性は薄そうです。
なお、トラキア軍が使う飛竜は何なのか? については特に設定が語られていません。紋章の謎では「知能の退化した飛竜族」とされていましたが、ユグドラル大陸の飛竜についてはゲーム中でも製作者インタビューでも特に言及がないため扱いが不明です。
余談ですが、貧しいと言っているトラキア軍が餌代とかメチャメチャかかりそうな飛竜を使っているのもまあまあ違和感ありますね。
おわりに
疑問ばかり募りますが、考えて結論の出るような材料はゲーム内・ゲーム外のどちらを見ても残されていないため、断言できることは何もありません。しかし、この祭壇をベルドが立てこもるだけの施設と見るのは無理があるのは確かだと思っています。
個人的には、ラストマップはイード神殿で、親世代の戦士たちと感動の再会をする……といったストーリーが見てみたかったですね。そうすると前述のとおり聖戦の系譜のストーリーと齟齬が出ますが、トラキア776は現状のストーリーでも結局はパラレルワールド状態なので、どうせパラレルならもっとifの世界に振ってみてもよかったのでは? などと思ってしまいます。
他に、「実はこうなんじゃないか」といったご意見があれば、ぜひお聞かせください。