10インチ版raytrektab(レイトレックタブ) はワコム製デジタイザーペンを搭載したWindowsタブレットで、「お絵かきペンタブレット」として絵師向けに開発された数少ない機種のひとつです。
10インチ版raytrektabはバージョンアップや価格改定のタイミングで、何回かプレスリリースが出されているのですが、そこでのスペック表記を見ると、ペン性能が少しずつ重要視されてきているのが見て取れました。
目次
DG-D10IWP発表時(2018年12月)
【『raytrektab(10インチモデル)』特長】
・『Wacom feel IT technologies』を採用。4096階調の筆圧感知ペンを搭載
・本物の紙のようななめらかな描き心地液タブ界に革命を起こした“お絵かきペンタブレット”
『raytrektab -レイトレックタブ-』新製品10インチモデルを発表
ドスパラ・プレスリリース 2018.12.13(木)
DG-D10IWP発表時の記載です。この時点では筆圧階調以外は「本物の紙のような」という具体性のない記載のみで、非常にふわっとしています。
この時点では公式ではアピールされていませんでしたが、ペンのスキャンレートについては実測を行い、360Hzであることが確認できていました。
DG-D10IWP2発表時(2019年6月)
■高性能デジタイザにより、まるで紙に描いているような描き心地を実現
筆圧4096階調、日本初の最新Wacom製デジタイザを搭載し、遅延の少ない滑らかで快適な描き心地を実現しました。デジタイザーペンも5gと軽量で、疲れを感じず取り 回しやすくなっています。また、10インチサイズの大きさは持ち運びに便利なだけでなく、作業領域も十分なサイズを確保でき、快適なお絵かき環境を実現します。まるで紙に描いているような描き心地を是非ご体験ください。お絵かきペンタブレットraytrektabに新モデルPentium Sliver バージョンが登場
さらに三菱鉛筆コラボ筆圧感知ペンプレゼントキャンペーンを開催
ドスパラ・プレスリリース 2019.6.28(金)
CPUがパワーアップした DG-D10IWP2 発表時の記載です。「遅延の少ない滑らかで快適な描き心地を実現しました」と、なぜ描き心地がよいのかの理由について言及されています。ただし、ここでは具体的にどれくらい遅延が少ないのか、どう滑らかなのかまでは言われていません。
プレスリリースでは言及されていないものの、商品ページの製品仕様表に「スキャンレート360Hz」と記載されるようになりました(DG-D10IWP発売当時は記載されていませんでした)。
Wacom feel IT technologies デジタイザ4096階調 スキャンレート360Hz
raytrektab DG-D10IWP(レイトレックタブ DG-D10IWP2)
マンガ・イラスト制作用パソコン(PC)
DG-D10IWP2価格改定時(2020年9月)
◆ワコムデジタイザ搭載
360Hzのスキャンレート、傾き検知、筆圧4096段階、ワコムによって専用チューンナップされた最適なファームウェアを採用。低遅延でスムーズな描き心地を実現しました。 約5gと軽量なデジタイザーペンが付属し、長時間の作業にも負担が少なく、また、一般的なデジタイザーペンに比べ細身のペン先は繊細な線を描くのに適しています。芸術の秋に向けて、創作のお供に
人気のお絵描きタブレット「raytrektab」が価格改定
お求めやすい価格となりました。
ドスパラ・プレスリリース 2020.9.4(金)
360Hzのスキャンレートと傾き検知が、ペンの性能としてアピールされるようになりました。ここまで来たら「低遅延」についても具体的な数値が欲しかったですが、とはいえかなり具体性を持った記載となってきています。
なお、公式が傾き検知への対応について触れたのは今回が初です。初すぎて、製品ページにも記載されていません。製品ページに記載がないことをプレスリリースで言及するのはどうなのかという疑問もないではないですが(笑)、実際に使用して、傾き検知が動作していることは確認できるので問題はないかと思います。
RT08WT発表時(2020年12月)
8インチ版raytrektabの新型、raytrektab RT08WTが発表されたのを機にDG-D10IWPの商品ページもリニューアルされ、スペックにも「Wacom feel IT technologies デジタイザ(筆圧4096階調、スキャンレート360Hz、傾き検知)」と記載されるようになりました。
なおraytrektab RT08WTの公式ページでは、ペン性能が殊更にアピールされています。
360Hzのスキャンレート、傾き検知、筆圧4096段階、ワコムによって専用チューンナップされた最適なファームウェアを採用。筆圧4096段階は初代から変わらない数値ですが、低遅延性やスキャンレート向上による追従性が向上。raytrektabは筆圧の段階数という数値指標ではなく、低遅延性や傾き検知などの体験的指標を追求しています。
また、一般的なスタイラスよりもペン先が細く、鉛筆などの文具と視覚的に近いワコムスタイラスを採用。バッテリーレスで充電も不要な文具らしいスタイラスペンです。
「raytrektabは筆圧の段階数という数値指標ではなく、低遅延性や傾き検知などの体験的指標を追求しています」、その考え方は素晴らしいと思いますが、10インチ版の発売当初は別にそんなこと言ってなかったし、実際の測定結果がユーザー間で話題になってから乗っかった感があります。また、傾き検知や低遅延性は数値化できるはずなので、そこも微妙な言い回しです。まあペン性能を重要視してくれている点が肝要なんでいいですけど。
Clover Paintの中の人がAndroidやWindowsのスタイラスペンの性能を測れるアプリを制作されたのは、測定結果を公表することでメーカーにある種の圧力をかけるためだったと理解しています。定量評価できないとメーカーも性能を上げようという気になりませんからね。
これまではぼんやりと、なんとなくこの端末は描き心地がいい/悪い、という感覚でしか語れなかった部分を、Clover SCは客観的な数値として表示できるようにすることで、簡単にペイントアプリで利用した時の端末の優劣を評価できるようになります。
(中略)
デジタイザー付きAndroidタブレット端末をお持ちの方は、是非Clover SCで予測ありストロークを試していただきたいのです。そして、それを見て、そのストロークの描き味が変な予測ではなく、普通に得られるようになればなぁという、私の願望に同調してくださる方は、手持ちの端末をClover SCで試し、ペイントアプリの描き味に関わる描画性能をブログやSNS等ネットでどんどん流してください。
もし当サイトで測定した結果を公表したことがメーカーの考え方に影響を与えたなら、一定の成果が出たといえるのではないでしょうか。
ペンのスキャンレートとは(用語解説)
ペンのスキャンレートとは、アナログなペンの動きのストロークをデジタル変換する際に、秒間に読み取る回数です。pps(ポイント/秒)またはHz(サイクル毎秒)で表現されます。当然ながら数値が高いほど滑らかに描けると期待されます。
傾き検知とは(用語解説)
ペンの傾き検知は、ペンが画面に対してどれだけ傾いているかを検出する機能です。アプリによっては傾きレベルを使ってブラシ形状を変化させ、本物の鉛筆を傾けて描いたかのような表現などができるものもあります。
傾き検知はカーソル位置の補正にも使われているようで、傾き検知に対応する機種はペンを傾けたときにカーソルがズレにくい傾向があります。
雑感
具体化できるスペックは具体化してアピールする、これは非常に良い傾向だと思います。
デジタルペンというとすぐに「本物の紙のような」とだけ言って終わっていることが多いですが、ペンが使える機種が増えた昨今、そのペンが他の機種より優れているなら具体的にスペックでアピールしてもらいたいものです。