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IntuosやCintiqは文字認識モードにするとペンのスキャンレート(pps)が上がる

ワコムのペンタブレットは「文字認識モード」に変更すると性能を引き出せる、と昔から言われていますね。しかし「設定を変えたほうがよい」という情報しか伝達されず、なぜ変える必要があるのか、設定を変えるとどういった変化が起こるのかまでは継承されなかったようです。

軽くググってみたところ、文字認識モードが筆圧段階を増やすものであるなどと誤った情報を掲載したブログが複数存在していたため、データやマニュアルを参照した正しい情報を記載しておきます。

「文字認識モード」に変更する方法について

「ワコムタブレットのプロパティ」を開き、デバイスの一覧から該当のタブレットのアイコン(ここではCintiq Pro 24P)をダブルクリックするとダイアログボックスが開き、「タブレットモード」が変更できます。

タブレットモードは「標準モード」と「文字認識モード」の2つがあります。

文字認識モードと筆圧段階は無関係

文字認識モードについて、筆圧が1,024段階に制限されているのを解除するものと説明しているページがいくつもありました。これは誤りです(この制限はオプションに別項目として存在します)。

なお筆圧段階については、標準設定では確かに1,024段階に制限されています。筆圧段階の制限を解除したい場合は、「ワコムタブレットのプロパティ」を開き、「オプション」から「筆圧が1024レベルまでしかサポートされていないアプリケーションを正しく動作させるために、筆圧レベルを調整します。」のチェックを外します。

文字認識モードにするとペンの読取速度が上がる

IntuosやCintiqはタブレットモードを文字認識モードにすると性能が上がる。これ自体は正しいです。しかし設定項目上で説明がないせいか、具体的にどのような変化が起こるのかについては理解を得にくいのかもしれません。

タブレットモードを変更するとデータ転送速度(ペンの読取速度)が変わります。これはIntuos 4やIntuos Proのマニュアルに記載があります。

タブレットモードの変更
Intuos Pro は、ほとんどのソフトウェアで最適なパフォーマンスでお使いいただけます。ただし、手書き認識ソフトの中には、一般的なソフトウェアよりも高いデータ転送速度を必要とするものがありますので、お使いの環境によってはコンピュータのパフォーマンスが低下する場合があります。

ご使用の手書き認識ソフトウェアの動作が十分ではない場合、ペンタブレットのモードを標準から認識モードに変更してください。

コントロールパネルの「タブレット」リストから、ペンタブレットのアイコンをダブルクリックします。「タブレットモード」設定は、すべての入力デバイスとソフトウェアに適用されます。

グラフィックソフトウェアでは「標準モード」をおすすめします。「文字認識」では、データ転送速度が最大になります。一部の手書き認識ソフトはこの設定でお使いください。

Intuos Pro (PTH-451, PTH-651, PTH-851) ユーザーズマニュアル 51ページ

ペンの読取速度はスキャンレートやサンプルレートなどとも呼ばれており、アナログなペンの動きのストロークをデジタル変換する際、秒間に読み取る回数を示します。単位はpps(ポイント/秒)やHz(サイクル/秒)で表現されます。数字が多いほど読取性能が高くなります。

Intuos Proの読取速度は、仕様表では「最高200ポイント/秒」とされています。

実測

ペンの読取速度は実測すれば一発で分かります。Cintiq Pro 24でやってみました。

Cintiq Pro 24 標準モード(平均8378μ秒≒119.4pps)

標準モードでは約120ppsであるのに対し、

Cintiq Pro 24 文字認識モード(平均5535μ秒≒180pps)

文字認識モードでは約180ppsと、読取速度が1.5倍になることが分かりました。

【検証】dynabook RZ82のペンのスキャンレートは他より優れているのか、他のタブPCや液タブと比較した結果でも使用したTabPCScanRateで確認しています。計算方法等は上記の記事を参照願います。

現在は標準設定が「文字認識」なので設定不要?

Intuos3~4の頃は設定を変えなければ曲線がガタガタになるとして、ほぼ必須の設定と各所で言われていました。当時はAdobe Photoshopなどのソフト側に手ぶれ補正がなかったことも大きいかもしれませんが。

しかしCintiq Pro 24は標準設定が「文字認識」となっていたため、設定不要でした(これは機種やドライバーのバージョンによって変わるかもしれません)。「標準モード」が標準設定でないのはやや違和感がありますが、昔はそちらが標準だった名残でしょう。

読取速度を高めるとその分だけ処理能力が必要となるため初期設定では制限していたとか聞いたことがあります。これが事実かどうかは不明ですが、仮にそうだとしても現代のPCでは問題にならない程度の負荷なので文字認識モードが標準設定になったと思われます。

機種によっては設定項目がない

Cintiq 24HD touchにはタブレットモードの設定がありませんでした。そのせいでワコムペンドライバー自体からこの項目がなくなったと思っていましたが、上で試したように、Cintiq Pro 24にはあります。

皆様の使っている機種にもタブレットモードの設定があるか、改めて確認してみるのもいいかもしれませんね。

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